フランスのコイン


● フランスになる前のコイン
  フランスに最初にコインをもたらしたのは、ギリシャ人です。 ギリシャ人は、地中海沿岸に植民都市を作りました。 マッシリア(現マルセーユ)や、ニケーア(現ニース)が代表的な都市です。 それらの都市で、ギリシャ本国のコインを見習ったコインを発行しました。
  その次はケルト人です。 スイスやオーストリアの山岳地帯に独特の文化をつくっていたケルト人の一派が、フランスにやってきました。 彼らは、はるか東方のマケドニアのコインに見習ったコインを発行しました。
  その次にフランスを支配したのはローマ人です。 紀元前1世紀、カエサルがこの地のケルト人(ローマ人は、彼らをガリア人と呼んでいました)を征服し、ローマの属州としました。 ローマの皇帝たちも、しばしばフランスでコインを発行しています。

ギリシャ人のコイン
マッシリア(現マルセーユ)のオボル銀貨
(紀元前4世紀)
11.6mm 0.5g
ケルト人のコイン
テクトサゲース族のドラクマ銀貨
西南フランスのウォルカエにて発行
(紀元前1世紀)
15.2mm 2.8g
ローマ人のコイン
ガリア皇帝ポスツゥムスのアントニニアヌス銀貨
リヨンにて発行
260〜269年
21〜23mm 3.9g

● フランス王国のコイン
  5世紀になって、ゲルマン民族の一派のフランク族が、西ローマの一部だったこの地に住み着き、フランク王国(後のフランス王国)を作りました。
  西ローマ帝国滅亡以来、貨幣経済は衰えていましたが、755年、カロリング朝の創始者ピピン王が貨幣制度を整えました。 ローマの体系を見習って、
     ● 1リーブル=20ソル=240ドゥニエ
を基本とするものです。 発行された貨幣は、ドゥニエ銀貨の1種類だけでした。

ノルマンジー公リシャール1世のドゥニエ銀貨
943〜996年
表はギリシャ十字架と、周りにRICHALD。
裏は教会の図と、周りにROTOMAGVS(首都ルーアンの古名)
20〜21mm  1.0g
フランス王ルイ9世のドゥニエ銀貨
1226〜1270年
表はギリシャ十字架と、周りにLVDOVICS REX。
裏は城門の図と、周りにTVRONIS CIVI
19mm  0.9g

  13世紀ころから、金貨(エキュドール)や、大型の銀貨(グロ銀貨)も発行されるようになりました。
  他に、「エキュ」という銀貨の単位もありました。 1エキュはおよそ3リーブル、後4〜5リーブルで変動していました。

フィリップ4世のグロ銀貨(12トゥール・ドゥニエ)
1285〜1308年
25.3mm  3・2g
シャルル10世の1/4エキュ銀貨
1591年
28.5mm  9.4g

  このころは、フランス王室以外にも多数の封建諸侯や司教などが貨幣鋳造権を持っており、それぞれ独自の貨幣を発行していました。
  西フランスの大半を領有していたアンジュー家も、トゥールで独自の貨幣を発行していました。 1203年、フランス王がトゥールを占領し、これ以降、王室領内でもパリのシステムとトゥールのシステムが共存することになりました。 パリ貨は、トゥール貨の1.25倍の価値がありました。

中世フランスの王室以外の主な貨幣発行者
(青の破線は1180年におけるフランスとドイツの国境)
1.アキテーヌ公
2.アルル大司教
3.アルトワ伯
4.アヴィニョン教皇領
5.バール公
6.ベアルン伯
7.ブサンソン(スペイン王領)
8.ブイヨン公
9.ブルターニュ公
10.ブルゴーニュ公
11.カンブレー大司教
12.ドール(スペイン王領)
13.ドンブ公
14.エヴルー伯
16.ローレーヌ公
17.メス自由市
19.モンペリエ男
20.ナヴァル王
21.オランジェ公
22.プロバンス伯
23.ルテル伯
24.ストラスブール自由市
25.ヴェルダン司教

ローレーヌ公国のテストン銀貨
1588年
27.7mm  8.9g
スペイン王領ドールの銀貨
1622年
23.6mm  1.9g

● ルイ王朝のコイン
  フランス王の王権を絶対的なものにしたのは、ブルボン王朝です。 王は代々ルイを名乗りました。 ルイ14世、15世、16世の3人で、150年間もフランスを治めました。
  このころのコインは、次の3つの体系がありました。
    ● 1リーブル(後フランと改称)=20ソル(後スーと改称)=240ドゥニエ
    ● エキュ  1エキュ=6フランに固定されました。
    ● ルイドール ルイ金貨という意味です。単位の名称はありません。

ルイ14世のルイドール金貨
1701年
25.2mm  6.4g
ルイ15世の1/10エキュ銀貨
1763年
21.0mm  2.8g
ルイ16世の1スー銅貨
1785年
28.1mm  11.2g
ルイ16世のエキュ銀貨
1784年
41.3mm  29.0g
  【ブルボン家】
  アンリ4世(1589-1610)─ルイ13世(1610-43)─ルイ14世(1643-1715)─○─○─ルイ15世(1715-74)─○┬─ルイ16世(1774-92)
                                                 ├─ルイ18世(1815-24)
                                                 └─シャルル10世(1824-30)
  一番大きいエキュ銀貨は、当時の肉体労働者の4〜5日分の賃金に相当します。 マリーアントアネットの衣装費は、1日でこの銀貨100枚分だったそうです。

● 革命後のコイン
  革命政府は、貨幣制度を改め、
     ● 1フラン=100サンチーム
としました。
  ナポレオンは、大量の金貨(ナポレオン金貨)を発行しました。 政情が不安定な時代、この金貨で財産を守った人が多くいたそうです。
ナポレオンの40フラン金貨
1811年
26.0mm  12.8g
ルイ18世の5フラン銀貨
1824年
37.4mm  24.8g

● フランス・コインの歴史年表

世紀王朝・国王コインの記事関連記事
前5世紀 前5〜2世紀 ギリシャの植民都市Massaliaなどでコインを発行。
前4世紀
前3世紀
前2世紀 前2〜1世紀、ガリア人たちがコインを発行。
前1世紀 BC52〜476 [ローマ帝国] 52 ローマの属州となる。
1世紀 1〜5世紀、ローマ帝国の貨幣が流通。
2世紀
3世紀
4世紀
5世紀 486-751[メロヴィング朝]
○貨幣経済が途絶える。
○西ゴート族などが、わずかにローマに見習ったコインを発行。
476 西ローマ帝国滅亡。
6世紀 ○サリカ法典の成立。
7世紀
8世紀 751-987[カロリング朝]
751-68 ピピン短躯王
768-814 シャルルマーニュ大帝
755 ピピンの貨幣改革、ドゥニエ銀貨を発行。
 (1リーブル=20スー=240ソリドスを貨幣単位とする銀本位制)
732 ツールポアチエの戦いでサラセン軍を撃退。
9世紀 843 フランク王国三分(仏独伊の基礎)。
○封建的土地所有制(荘園)の発生。
10世紀 987-1328[カペー朝]
11世紀 ○商業が復活し、貨幣の発行も多くなる。
○このころは、王室の他、諸侯、自由市、教会などでも貨幣を発行。
1066 ノルマンディ公ウィリアム、イングランドを征服
1096 第一回十字軍。
○11〜12世紀 森を開拓した農地が拡がる(「大開墾」)。
12世紀 ○12世紀末より、パリとトゥールの2箇所で銀貨を発行。
○12〜13世紀 シャンパーニュ地方の定期的な大市が盛ん。
13世紀 1226-70 ルイ9世(聖王) ○パリ貨は発行されなくなる。
  ただし、計算上の単位として16世紀初頭まで残る。
1266 ルイ聖王の貨幣改革。エキュドール金貨、グロ銀貨を発行。
○「農業革命」(三圃制・金属農具の普及)。
○貨幣経済が地方にも浸透し、地代の金納化が進む。
○多種多様な貨幣に対応するため、両替商(銀行)が出現。
14世紀 1328-1498 [ヴァロア朝] ○度重なる改鋳で、貨幣品位が下落し、貨幣の秩序が乱れる。
1360 フラン金貨を発行(1リーブルに対応)。
1338-1453 百年戦争。
1347-51 ペスト流行で人口激減。
○農奴解放がすすむ。
15世紀 1461-83 ルイ11世
1498-1589[ヴァロア・オルレアン朝]
○ルイ11世による通貨の標準化。
  小諸侯・教会による発行はだんだん少なくなる。
16世紀 1589-1830[ブルボン朝] 1514 テストン銀貨を発行。
1549 貨幣製造に水車を動力とした機械化が出現。
  コインの側面にギザギザをつけることができるようになる。
1577 エキュ金貨(3リーブル)を本位とする。
○新大陸からの銀の流入で貨幣価値が3分の1に下落。
17世紀 1643-1715 ルイ14世 1640 ルイ13世の貨幣改革、金銀比価は1:14.49。
  エキュ銀貨、ルイドール(5リーブル)金貨を発行。
○貨幣製造の機械化が進む。
○貨幣の発行が王室のみに統一される。
○ルイ14世が重商主義を推進する。
18世紀 1715-74 ルイ15世
1774-92 ルイ16世
1792-1804[第一共和制]
1799-1815 ナポレオン
1701 ルイ金貨・エキュ銀貨改鋳に伴い手形発行(紙幣の嚆矢)。
1795 革命政府により、1フラン=100サンチームの貨幣制度となる。
1789 フランス革命。
19世紀 1814-1848 [王政復古]
1848-52 [第二共和制]
1852-70 ナポレオン3世
1870-1940 [第三共和制]
1801 ナポレオン金貨を発行。
1865 ラテン貨幣同盟。
 (スイス、イタリア、ベルギー、スペインなどと共通の貨幣重量)
20世紀 1914-18 第一次世界大戦。
1939-45 第二次世界大戦。
21世紀 2002 ユーロに移行。

パリ、地下鉄ポンヌフ駅のホームにて
(「貨幣博物館」の最寄駅;2007年8月)

2007.2.27  2007.10.18 ローマ人のコインを改訂 2007.11.13 ドゥニエ銀貨を追加   2008.5.3 さらに追加