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■心のつく所無き歌二首 我妹子(わぎもこ)が額に生ひたる双六の牡牛(ことひのうし)の鞍の上の瘡(かさ) [3838] わが背子が犢鼻(たふさき)にする円石(つぶれし)の吉野の山に氷魚(ひを)そさがれる [3839] 右の歌は、舎人親王侍座に令して曰く、もしよる所無き歌を作る人あるときは、賜ふに銭帛を以ちてせむといふ。 時に、大舎人安部朝臣子祖父すなはちこの歌を作りてたてまつれり。 すなはち募(つの)れりし物銭二千文を給ひき。 |
【大意】 訳の分からない歌2首 妻の額に生えている双六の牛の鞍の上にはれものがある 夫が下着にする丸い石の吉野の山に小魚がさがっている 右の歌は、舎人親王が、訳の分からない歌を作ったものには褒美をやろう、とおっしゃられたので 安部朝臣がこの歌をつくり、2000文賜りました。 |
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| あかつきよりあめふれば、おなじところにとまれり。ふなぎみ、せちみす。さうじものなければ、むまときよりのちに、かぢとりのきのふつりたりしたひに、ぜになければ、よねをとりかけて、おちられぬ。かかることなほありぬ。かぢとり、またたひもてきたり。よね、さけしばしばくる。かぢとりけしきあしからず。 | 暁より雨降れば、同じ所に泊まれり。船主、節忌す。精進物無ければ、午刻より後に、楫取りの昨日釣りたりし鯛に、銭なければ、米を取りかけて、落ちられぬ。かかること尚ありぬ。楫取り、また鯛持て来たり。米、酒しばしば遣る。楫取り気色悪しからず。 | 夜明け前から雨が降るので、同じところに泊まっている。船主さんがお精進する。野菜類がないので、午後からは船頭が昨日釣った鯛で、銭が無いから、船頭に米をやって、精進落ちをされた。こんなことはその後もあった。船頭はまた鯛を持って来た。米や酒をたびたび遣った。船頭の機嫌はいい。 |
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■眞乗院に、盛親僧都とて、やんごとなき智者ありけり。
極めて貧しかりけるに、師匠死にざまに、銭二百貫と坊ひとつを譲りたりけるを、坊を百貫に売りて、かれこれ三万疋を芋頭の銭(あし)と定めて、京なる人に預け置きて、十貫づつ取り寄せて、芋頭を乏しからず召しけるほどに、また、他用に用ふることなくて、その銭(あし)皆に成りにけり。 三百貫の物を貧しき身にまうけて、かく計らひける、まことに有難き道心者なりとぞ、人申しける。 |
【拙訳】 仁和寺の真乗院に、盛親僧都という、たいへん高徳な方がいました。
たいへん貧乏でしたが、師匠がなくなって銭200貫と一つの寺を相続したので、100貫で寺を売り払い、3万疋(300貫)の財産を手にしました。 それを里芋代と決めて、都の人に預けて、10貫ずつお金をおろして、心行くまで里芋を食べていました。 他に散財することもなく、全てが里芋代になりました。 300貫の大金を全て里芋に使うとはたぐい稀な道心者だ、と皆んなは誉めました。 |
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