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生物を複雑系としてとらえて研究をする。簡単そうに見えて、これほど難しい事はありません。たった1台のコンピュータで世界を変える。そんな夢を追いかける研究者が、ネットで見つけた参考になりそうなものをここに紹介しています。


寺田寅彦

Bionicsの11月号に、和田昭允先生が寺田寅彦の文章を引用されており、それがとても印象深かったので、ここに引用させてもらいます。

「(私も)人並みに花を見て喜び月に対しては歌う。しかしそうしている間にどうかすると突然な不安を感じる。それは花や月その他いっさいの具象世界のあまりに取り止めどころのないたよりなさである。どこをつかまえるようもない泡沫の海におぼれんとする時に私の手に触れるものが理学の論理的系統である。絶対的安住の世界が得られないまでも、せめて相対的のたしかさを科学の世界に求めたい。ー中略ー多くの人は一見無味乾燥なように見える抽象的系統の中に、花鳥風月の美しさとは少し種類のちがった、もう少し歯ごたえのある美しさを、把握しないまでも少なくも瞥見する事ができるだろうと思う。」

ぼくも、抽象的系統が花鳥風月の美しさをコンピュータの中に描き出す可能性を確信しながら、それがあやふやである不安ゆえに、日々確かなものを手探りしている気がします。こと科学の世界にいる限り、この不安こそが本質的な何かを求める原動力であるのかもしれませんね。(20061023)
サイエンスポータルの和田先生の言葉

複雑系とは?

複雑系とひとことで言っても、その捉え方やモデル化の方法は千差万別。はっきりとした定義というものは無いというか、研究者それぞれが定義を持っている。また、生命現象が複雑系である事は、多くの人が認めるところですが、そのアプローチ方法もさまざま。DNAマイクロアレイやプロテオーム解析のような、ある瞬間の生命を網羅的に捉える方法や、人工生命を作ってみようという野心的な試みもあります。下の鈴土さんのホームページには、セルオートマトンを中心に、いろいろな複雑系についてまとめてあって、面白いです。わたしは、人工生命って何?というページの、ラングトンの紹介が、印象的でした。地球外生命との遭遇が難しいなら、生命を作ってしまえばよい。骨という組織について知りたければ、骨を作ってしまえばよい、というiBoneの思想も同じところからスタートしています。(20050706)
セルオートマトンと複雑系

なぜ分からないのだろう、、、

僕みたいに、ちょっと変わった研究をしていると、複雑系的な考え方をすんなり受け入れる人と受け入れない人がはっきりと区別できるのに気づきます。僕は、すんなり受け入れるタイプなのですが、受け入れない人が「なぜ」受け入れられないのかが、ずっと分からなかったのです。逆に、論理的だけれどややこしい説明を延々と続ける研究発表を見ると、頭が真っ白になって、すごく嫌な気分になります。しかし、そういう研究の方が、学会などでは評価が高かったりする。その理由が、やっぱり分からない。それに、少しだけ答えてくれそうなのが金子邦彦先生の言葉です。今の生物学(特に分子生物学)は、天動説に似ている。新しい発見があるたびに、ややこしい説明を付ければ、なんとか説明できる。でも、本当はもっと簡単に説明できる方法があるんじゃないかな、、、。天動説も地動説もモデルなんです。どっちがより本質を説明しやすいかということなんじゃないかと。「ある方程式を解いたり、なんとか遺伝子を見つけました、っていうのは、基本的に試験で良くできた、というのと変わらないわけです。そうじゃなくって、もっと自分の新しい世界観というものと繋がるような研究を出していくべきだと思うんですが、そういう科学者も減っているし、そういうジャーナリズムも減っている、そういう悪循環なのかもしれない」、、、、、僕も、そう思います、、、すごく。
金子邦彦先生のインタビュー (20050126)

居酒屋 複雑系

複雑系のブームをリアルタイムで経験していない僕ですが、Webでその痕跡を追う事ができます。ブームに乗って騒いでいただけの人が去った後に、「本物」が残っている様です。サンタフェ研究所が、その代表ではないでしょうか。日本にサンタフェ研究所があれば良いのにと、常々考えていたところで見つけたのが、居酒屋「複雑系」。正式名称「複雑系応用ビジネス研究会」です。入り口はともかく、中に入ってみると本格的な複雑系論議が交わされているのに驚かされます。特に、理論系というより実用系というところが、僕の趣味に見事にはまりました。冗談が言えて、自分に真面目で、お酒が飲める事が入会資格の様です(笑)。複雑系というのは、学会などで真面目に議論するより、こういう雰囲気でガヤガヤやってる時が一番面白いんですよね。そして、こういう雰囲気の中から、とんでもない物が生まれる可能性があるのかもしれないし、無いのかもしれない。

Tierraは生きている

下記のTierraのリンクが切れてしまいました。Tom Rayさんも他の研究施設に移られた様です。千変万化するこの世の中では、すべての物がうつろいゆく。そして、新しい人工生命を研究する研究室を発見しました。名古屋大学の有田先生の研究室は、人工生命を前面に打ち出した研究を行っている若い研究室です。人工生命の歴史を簡単に記した「10歳の人工生命」や、大量の人工生命関連リンクを納めた「人工生命の宝庫」など、人工生命関係の日本のホームページの中では随一ではないかと思います。

複雑系生命システムプロジェクト

わたしが、この小さなホームページで夢物語とし書き連ねて来た様な事が、現実のプロジェクトとして動き出しました。文部省のCOE(Center of Excellnece)のプロジェクトとして、東大の金子邦彦先生を中心に始まっています。以前この研究所でセミナーをして下さった浅島先生の名前もメンバーとして上がっており、非常に発展が楽しみであると同時に、なんとかして潜り込みたいという衝動にかられています(^^;。でも、日本で遂に複雑系システムとしての生命を、正面から捉えた大プロジェクトが立ち上がった事は大変すばらしい事です。>複雑系生命システムプロジェクト

複雑系

約10年前に、アメリカのサンタフェにひとつの研究所が作られました。その研究所に集まった何人もの優秀な(ノーベル賞受賞者が何人もいるような)研究者が開拓しようとした科学。それが複雑系(Complexity)の科学です。その芽は既に20世紀の前半に芽生えていました。しかし、物事を還元論的に、つまり物を細かく分解してとことんまでつきつめる事で理解しようとする勢力が強すぎて、1+1が2以上になる場合がある事を多くの科学者は忘れてしまいました。「3人寄れば文殊の知恵」というのは、3人のひとが集まって「コミュニケーション」をとることで、それぞれが別々に考えていては決して発見できない知恵を得ることができるという事ですが、それが本当に意味することを科学者は忘れてしまったのです。

また、「時間」の概念も置き去りにされがちです。今の自分と1分後の自分が「同じ」だという錯覚が生物学者を惑わせます。経済の目指すところは安定だという迷信に経済学者は自分を見失います。そして、生物学も経済学も「現実」から少しずつ遠ざかってしまいました。平家物語に「無常」という言葉が出てきます。鴨長明の方丈記「行く川の流れは絶えずして、、」という一節にも自然の真の姿が見えかくれしています。僕は日本人として産まれた事をこれ程うれしく思うことはありません。なぜなら、今の科学に欠けている物、そして、僕自身がこれから取り組みたいと思う事が日本の風土にしみ込んでいる事に気付いたからです。

この先、日本の研究者がどのように自分の道を切り開いていけば良いのか。ただ、いつまでも西欧流科学のコピーをしていては決して真実にせまることはできないし、何よりも全然楽しくありません。右脳と左脳をたくみに使って「自然」を感じることのできる日本人にとって、複雑系は願ってもない素材だと思うのですが、、、。(1999.11.9)

生命⊃遺伝子

この生命科学研究所に赴任してから,所長の多田富雄先生をはじめ,国内外の多くの優れた研究者とお話しする機会を得て,今こそ新しい生物学を立ち上げる良いチャンスではないかと感じました.クローニングの時代はヒトゲノムプロジェクトでピークを迎え,ひとつのデータベースとして永遠に残るでしょう.では,その後に何をすれば良いのか?明確なビジョンを持っている研究者がどれだけいるのでしょうか?

偉そうなことを書いてきましたが,僕自身が3年後,5年後を見据えて何をすれば良いのかわからなくなってきているのです.少なくとも生命というのは物と物,細胞と細胞,そして個体と個体の相互作用です.そして,その本質は,非常に複雑な化学反応の積み重なりであり,時間と共に変化しながら総体としてはホメオスタシスを維持し続ける...それが生命です.そして、僕のやりたい生物学とは、この理解しがたい程の複雑さを解明することです。

Aというタンパク質とBというタンパク質がくっついた.次にCというタンパク質がAにくっつくとBが離れて...このあたりで,人間の脳は考えるのをやめたくなります(笑).しかし,われわれは面白い機械を作り出しました.生命の神秘を解く鍵は,意外とコンピュータサイエンスと生物学との境界あたりに潜んでいるような気がします.

BZ-反応

これを知っているひとはかなりの化学通かもしれません。この反応は「振動」し、「パターン」を形成します。その秘密は反応生成物によるフィードバックです。どのようなパターンかというと、ひとつは射的の的のような連続したリング。そして、やりようによってはTuringパターンのようなものさえできるようです。そして、現在この化学反応そのものをコンピュータシミュレーションによって理解しようという試みが始まっています(九州大学の甲斐教授のグループなど)。これを、われわれ生物学者が見のがしてはいけないと思います。僕を含め多くの研究者は試験管の中の試薬は「均一になるまで混ぜる」のが基本だと教えられます。細胞はすりつぶされ、DNAはそれにからみつく数多くのタンパク質を剥がされてから実験に用いられます。しかし、生物はBZ-反応のような非線形化学反応のるつぼであり、線形的な物の考え方をしていたのでは、決して理解できないと思いませんか?

Tierra

インターネットの発達のお陰で,自分の机の上からあらゆる種類の情報にアクセスできるようになりました.論文書きの片手間に探し当てたデジタル生命体の生息するTierra(テラ,地球の意味)の存在はこれからの生物学の方向性を暗示しているような気がします.進化というのは大変に時間のかかるものだというのが常識だったところに,プログラム生命体を導入して一晩で進化をシミュレートしたのですから...(それにしても,このプログラムを作製したTom Rayさんが,今日本に住んでいるというのには驚きました).

Tierraはコンピュータの中に生息する小さなプログラム生命体をはぐくむための仮想環境です.そこに自己複製のみを生きる目的としたコード(要するに自分を複製する命令を書き込んだ小さなプログラム)を植えてやると,それは増殖します.放っておけばすぐに限られたメモリーを使い果たしてしまいますが,ときどき死神があらわれてはコードを消してしまいます.それぞれのコードは独立したコンピュータと考えられ,より速く,効率良く複製するものが他のコードより数が増えます.コードの複製にはある程度の頻度でエラー(突然変異)が起き,それが「進化」のDriving forceです.その中で生存競争が起き,コードは進化していきます.そして最後に現われるのが究極の生命体かというとそうでもないようです.種というのは次々と現われては消えていく運命にあるらしいですよ...もっと詳しく知りたい方はTierra Homepageを御覧ください(リンク変更しました7/15/2004).

複雑系研究を志す人へ


御意見,御感想がありましたらこちらへどうぞ --> tezuka@cc.gifu-u.ac.jp

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