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F.Randall Farmer, 1988年秋 (Translated by Dr.Ken, 1997年秋)
はじめに(1993年秋)
この論文はルーカスフィルムのハビタットのベータテスト(1987-1988)で起こったことを書き留めたものである.この観察結果は後にChip Morningstar, Doug Crockford等と作った仮想世界研究会社の設立の基礎となったものである.もし,あなたがハビタットについてなにも知らないなら,ルーカスフィルムのハビタットを読んで欲しい.でなければこの論文の内容はあなたにとってほとんど意味をなさないだろうから.
ハビタットの根源,それはひとである.ハビタットはひととひとが交流をしながら,お互いのパラメータを変えていく世界である.Chipはそれを「人間のるつぼ」と呼んだ.何人かのひとにおもちゃを持たせて,ひとつの部屋にとじこめて,何が起こるか観察するという意味である.もしもルールの変更が必要になったら,まず,彼等にルールを変更せずに何ができるか試させてみる.それで駄目なら,彼等の要求にしたがってルールを変える.ハビタットを理解するということはそこに暮らすひとびとを理解するということから始まるのである.
ハビタットには5種類の人間がいる
1.受動者
人口の50%はこのカテゴリーにはいるだろう.オンラインコネクション時間のたぶん20%くらいをハビタットのために使うひとびとである.彼等がハビタットに来る目的は主にメールをチェックするのと毎日支給される100トークンを取りに,そして週刊のハビタット新聞を読むことである.面白そうなイベントがあると現われることもある.ここにハビタット全体が進化するための鍵が潜んでいる.特別なイベントはこの「ちょっとよってみようかな」的なひとをターゲットにすべきである.彼等は手をひっぱってあげないと参加してくれない.彼等は「楽しませてもらう」ことを望んでいることが多く,そのためになんらかの犠牲を払うことをよしとしない.ちょうどテレビを見ているような感じである.彼等を呼び込むこつはいかに,積極的な参加に導くかである.
2.能動者
次に多いのがこのカテゴリー.かなり多くのお金を使ってくれる.能動者たちは大体週2から5時間をハビタットで過ごす.大抵オンラインに接続してすぐにハビタットに入る.まず,することはESPを送って情報を集めることである.常に新聞を持ち歩き,いつも使い過ぎの危機にさらされている.彼等は本当にハビタットが好きなのであり,ハビタットで過ごすことで時間をわすれてしまう.キーワードは「倹約」である.
3.先導者
ハビタットの英雄である.ハビタットを住処とし,ハビタットをもっと楽しくしようとする.パーティーを開き,会社を起こし,営業に走りまわり,議論を白熱させ,ときには悪人になり,コンテストに入賞するのが夢.彼等は本当に貴重であり,50人の受動者に一人の先導者がいれば理想的である.彼等を育てよ.
4.介護者
もう,社員と呼んでもいいかもしれない.成熟した先導者である.彼等はよく新人を助け,争いを仲裁し,バグを報告し,システムを良くするための提案をし,イベントを主催したり,事業を継続させたり,とにかくハビタットの世界がうまく動くようにしてくれる.先導者に比べて,このクラスのひとはさらに数が少ない.400人から成るパイロットテストでは3人がこのクラスに入った.もう神とあがめよ.
5.神様(システムオペレーター)
私が最初のオラクル(システムオペレーター,シスオペ)であった.シスオペは最も重要な役割を果たす.それはギリシャ神話の神のようなものである.オラクルは祝福を与え,新しいアイテムやルールをもたらす.キーボードをたたけば銀行口座も思いのままだし,街を消してしまうこともでき,マフィアの息の根をとめることも朝飯前.しかし,その責任の重さゆえ,つねにその反動を注意深く考えなければならない.ある日突然電気が止まったら,神を恨む?ハビタットはまさしくそういう「世界」なのである.だから,それ相応の経験が必要である.最低でも10年以上ロールプレイングゲームの経験があり,ネットワークに2年以上(とりわけ,チャットに参加している必要あり)住み着いたことのあるひとでないと勤まらない.ファンタジー世界の一貫性を理解して,そこに暮らすひとの気持ちがわかるひとでなければならない.
ハビタット世界をより楽しいものに発展させるには,それぞれの個人をひとつ上のカテゴリーに導くことが重要である.
受動者>能動者>先導者>介護者>神様
もし,皆をひとつ右のクラスに導くことができたら,おめでとう.あなたは自己完結したシステムを作り上げることに成功したことになる.(大金も稼げるってこと)
ハビタットのベータテストは有料のテストであった.1分につき8セント(約10円)の料金を払って世界に入った.これで,われわれはハビタットがビジネスとして成り立つかどうかをテストしたのである.ただ,例外もあった.テスターの25%はQ-Linkのスタッフであり,少なくともいくらかの無料接続時間を持っていた.これが結局,ハビタットのイベントの成否を判断するのを難しくした.われわれが知りたかったのは,ハビタットがお金を払ってでも来たいくらい楽しい場所であったかどうかなのである.
これを読んで欲しい(行間を読むのを忘れずに)
あるユーザーはこのような手紙をよこした(少々改変)
わたしは今日でハビタットをやめます.お金がかかりすぎます.わたしはQ-Linkの会員になって2年ですが,最初の1年は2時間($10)しか使いませんでした.次の年は5時間($25).それなのに,先月はハビタットのために$270も使ってしまったんです!もうだめです.もっと安くしてください.
$270=57時間,あるいはそれまでの100倍以上も接続したことになる.われわれはハビタットを面白くしすぎたといえよう.
ほかにもこんな手紙がきた.
一ヵ月に50時間も遊んでしまうなんて思ってもみなかった.
ハビタットは麻薬的面を持っている.そのため,使用量によって割引をしたり,他にもいろいろな案がユーザーから提案された.そのどれもが実行されることもなく,もし実行したとしたら,大きな損害をこうむったであろう.これはハビタットをリリースしたときにもう一度起きることだという確信がわたしにはあった.
しかし,逆に1っか月で$1000使ったユーザーもいた.$300,$600に達した時点で,彼は利用料金をチェックするように勧められていたにもかかわらずである.あと20人もこのようなお金持ちユーザーがいれば,採算がとれたかもしれない.
ハビタットの通貨はトークンである.
アバターは最初2000トークンのお金を持ってスタートする.そして,毎日100トークンを受け取ることができる.コンテストやゲームでトークンを稼ぐこともできる.物の売り買いは自動販売機がある.ベンドロイドで,必要な物を買い,ポーンマシンでいらないものを売ることができる.ベンドロイドはコスト0で物を作り出す.これが結局インフレにつながっていくのであるが.この効果に気付くものはあまりいなかった.しかし,「大金かすめとり事件」でその一端があきらかになった.
大金かすめとり事件
アルファテスト中に,「人形ー水晶玉事件」が起きた.経済をより面白いものにするために,われわれはそれぞれのベンドロイドに別の価格設定ができるようにした.ジャックの店で買うと,近所の店より安いよ,ということが起こり得るようにしたのである.街をへだてた2つのベンドロイドでポーン価格よりも安い値段で売られているものがあった.人形(75トークン,買い取り価格100トークン)と水晶玉(18000トークン,買い取り価格30000!)ある,週末,何人かがこの事件を引き起こした.彼等は持てるだけのトークンと箱を持って,街角のベンドロイドに集まった.まず人形を買えるだけ買って,それをポーンマシンに持っていき,トークンに変えた.金額が水晶玉を買えるところまできたところで,今度は水晶玉を使って同じことを何時間もかけて繰り返したのである.結局3人のアバターがそれぞれ10万から50万トークンを稼ぎ出した.一晩でトークンの供給量が5倍にもはねあがったのである!
成金ビジネス
かれら,成金たちは,稼いだトークンを宝探しを計画してみんなに還元しはじめた.その他にもさまざまなイベントを通して,多くのユーザーがお金持ちになった.程なく,新しい,本当の経済が始まった.ヘッドである.ハビタットではヘッド(頭)をとりかえることができ,珍しいヘッドは時々イベントの賞品としてオラクルからもたらされたり,あるいは,おそろしく高価であった.そのヘッドの価格が急騰したのである.この現象はたとえば,数千人のひとにたいして200種類程のヘッドしかなかったら,そして,始めの選択に30前後のヘッドしかなかったら,例外なくおこることである.ヘッドはアバターが個性を主張できる唯一の方法だったのであるから.
イントロダクション
ハビタットはすでに述べたように,「社会」であり,それゆえにハビタットそのものがどうあるべきかについて議論が絶えなかった.スタート時点ではほとんどルールといえるものが無かったのである.
議論の多くは哲学的なものであった.アバターは人間として扱われるべきものか,それともパックマンみたいなものか?われわれは答えを出すことはできなかった.結局ひとびとが自分で答えを出した.これから述べることはあくまで,ごく少数の能動者と先導者たちによって導き出されたものであることを心にとめておいて欲しい.
初期の窃盗犯
テストの初期にはひとびとが他人の手から直接物を奪い取ることができた.あるいは,よく自宅で撃ち殺されるひとがいた.そこで,街の外でのみ盗みと撃ちあいができるようにシステムを改良した.(ここまでは単純な話だった.ここからがややこしくなってくる)
殺人110番
最大の話題の焦点は殺人だった.ハビタットのなかで殺されたアバターは自宅にテレポートされ,ポケットの中のものは失われ,もっていたものは現場に残されるしくみになっていた.つまり,持ちものと場所の変化でしかなかった.ある日,先導者の一人が街中で無差別に逃げ惑うひとを撃ち殺しはじめた.もちろん,ハビ殺人は犯罪かどうかという議論が持ち上がった.われわれは武器をすてるべきか?それともこれはただのゲームなのか?結論は投票にもちこされた.結果は驚くべきものであった.50%が犯罪であると.そして残りの50%はただの遊びだと.われわれは人間同士の殺しあいは半数ものひとにとって楽しいという結論に至ったのである.戦いに参加したくないひとはゴーストになって逃げればよい.よって武器を捨てる必要はないということになった.
Holy Walnut教会の宣告
ひとりの傑出した反暴力勢力が最初のハビタット牧師になった.現実世界のギリシャ教会の牧師がハビタット初の教会を設立したのである.彼は,信者に武器の携帯をやめさせ,窃盗やあらゆる種類の暴力行為に参加することを禁じた.しかし,不幸だったのは彼が花で教会を飾る度,わたしが扉に鍵をかけねばならなかったことである.なぜなら,彼の留守中に誰かがしのびこみ,花をポーンマシンに売り飛ばしてしまうから.
幸せな結婚
その教会で3組のカップルが結婚式をあげた.ただし,ひととひととの結婚ではなく,アバターとアバターの結婚式である.2人のターフ(部屋)は連結され一緒に暮らせるようになった.ただ,ちょっとした技術的問題で,部屋にはいれるのは一人だけということになってしまった.
3組目の結婚式の2週間後,ハビタット初の離婚が成立した.そのとき,わたしはハビタットはちょっとばかり現実に近すぎるのではないかと感じた.ハビタット初の弁護士が離婚の調停をし,街に宣言をした.
隣人をもてなすこと
パーティーはわたしのお気に入りのイベントである.特に新アバターのアパートでやるパーティーが.わたしがやったのは,「受動」アバターの一人にESPを送ってかれのアパートの住所を聞きだし,そこに「能動」アバターと「先導」アバターを送り込むのである.楽しい!
パーティーに関連して,お泊まりというのがあった.これはユーザーが自分たちで考え出したものだった.しばしば個人的な会話はターフの中で行われた.そこで泊まっていくとこを許されるのはある種の栄誉であった.つまり,次にログインした時に,そのアバターは主人がいるいないに関わらず,彼のターフの中に現われることができるのである.これは,主人の持ち物を自由にしてもよいというお許しなのである.
窃盗再び
盗みについてもう一度.窃盗は相変わらず可能であった.街の中に限ってみてもアイテムが一度地面に置かれてしまうと,それには持ち主がいないことになる.ちょうど殺人と同じように,このことは議論の対立を呼んだ.このときもわれわれはプレーヤーにすべてを任せる方法をとった.
仮想パーティー
始めの頃わたしは以下のような提案をした.アバターはそれぞれログイン名以外に,唯一彼にしかない名前を持てるようにしてはどうか.そして彼等は自分のなりたいものになれるということにしては.さながら巨大仮想パーティーのようなものである.この案は残念ながらQ-Linkによって却下されたが,そのかわりの案を出すことにした.もし,相手の秘密の正体を見てしまったら,自分の正体も相手にわかってしまう.そして第3者にはそれは決して見えることはない.というルールである.面白い現象が生まれた.一部のひとは正体がばれるのを恐れ,また別なひとは相手の「僕はWingoです.よろしくね」の一言さえあれば気にしなかった.一度面白い経験をした.わたしはそのリージョンにいるA さんにESPを送って自分の正体をばらしてから,BさんにわたしはAさんであると信じさせることができたのである.
ビジネス
経済はそれほどの大問題ではなかった.受動アバター以外の,ほとんどのひとは充分なトークンを持っていた.小売販売業を始める試みとして,薬屋がオープンした.店には鍵のかかる部屋があり,そこにしかないハビタット薬と毒薬が入ったベンドロイドが置かれた.店主は決まった仕入れ値を支払い,好きな価格で売ることができた.ただひとつの問題点は店主がまともな時間にログインしてこなかったことである.
政府?無政府?
われわれのコンセプトはハビタットの政治、政府、そして法律にできるだけ干渉しないということであった。多くのひとは殺人や窃盗犯罪は罰せられるべきだと考えていた。そこで、われわれは保安官の選挙をすることにした。一番人気の候補にあがったのは、親しみやすいアバターであったが、実は先のトークン稼ぎ事件の黒幕でもあった。そこで、市民会館で公開ディスカッションが開かれ、3人の候補者が演説をし、質問に答えた。わたし自信はゴーストとしてそれに参加していた。わたしは、まず「Foonに一票」とメッセージボックスに書いてから、デゴーストし、リターンキーを押して、誰もわたしが誰なのか知る間もない間にまたすぐにゴーストになった。これは面白かった。質議応答の間も、例えば「あなたは選挙資金をあー、ある特殊な方法で得たわけですけど、あなたに投票する必要があるんでしょうか?」とメッセージボックスに書き、デゴーストーリターンーゴーストした。ちょうど、銀玉鉄砲で撃ち合っているような気分が味わえた。結局は彼がなし崩し的に当選し、ポピュロポリス初の保安官が誕生した。
はじめの内は彼はただの「飾り物」でしかなかった。われわれは彼にどんな「力」を与えるべきかで頭を悩ませていた。彼はどこでも銃を使えるようにすべきか?監獄直行の魔法の杖は?法廷は?弁護士は?法律は?ユーザーに聞いて見よう!ということになった.「ハビタット安全委員会」がすべてのアバターにこのような手紙を送った.「保安官は何をすべきか?」「犯罪とは何か?」「保安官にはどんな特権を与えるべきか?」結論はテスト期間が終了する前には出なかった.しかし,このキャンペーンでわかったのは,ひとびとは無政府派と政府派にわかれていたということである.もしもテストでなく,もっと多くのひとがこの決定に関わっていたらどうなっていたか興味津々である.ちょうど現実と同じように,ハビタットも始めから政府を持たせてはならない.
魔法インフレ
経済的なインフレーションと同時にわれわれは魔法のインフレも経験した.Dungeon of Deathのなかに,1000トークンで買えるテレポートの杖が売られていた.この時点では,杖の魔法は無制限に使えた.この杖を使った犯罪は,まずゴーストで「カモ」になるアバターを探し,彼が荷物を地面に置くのを待ち構える.荷物を置いた瞬間にデゴーストして,アバターをテレポートさせ,あとはゆっくり盗む.事前に魔法使用回数を制限しようという計画はあったのだが,他のバグとりで忙殺されてしまった.そして,時が来て,神は魔法制限を行った.この話題も議論の的になった.ある親切なひとは,道に迷ったアバターを助けるのに杖を使っていた.多くのひとが,魔法の制限に反対した.自分に聞いてみてほしい.あなたならどうする?ハビタットのチーフオペレーターとしての根源にもかかわるような質問だね.
偉大なる「先導者」と「介護者」たち
介護者のなかでもとりわけて優秀であったのが「週刊Rant」新聞の編集者であった.彼は週に20から40時間(無料アカウントを持っていた)を20,30,40,時には50ページもの冊子を発行するために使い,最新のニュース,うわさ,イベント,そしてフィクションの読み物を報道し続けた.彼はハビタットで新聞を編集するだけであったが,それだけで偉大な業績である.かれは,記事をまとめおえると,それをRantのオフィスにあるチェスト引き出しに整理して,わたしにメールをくれた.わたしは,それを特別なプログラムを使って本にし,校正し,ニュースベンドロイドにセットした.そして,一部をRantのオフィスに送り返しておいた.これは,実にうまくいったが,かれに大きな負担を強いることになった.そこで,編集作業の一部をさらに自動化しようとした.ところが,この自動発行装置は発行の遅れ,校正作業の遅れを招き,最終稿も編集者に届かなかった.編集者はやめてしまった.現実世界と同じで,新人芸人はショーを演じ,そして傷つき去っていくのである.もう一度いう.このてのひとびとはめったに現われるものではなく,大切に扱わなければならない.Rantは二度と発行されないだろう.
決闘
魔法の杖のなかに,アバターをジャンプさせるものがあった.「はぁ!」っていうせりふと一緒にね.最初はただ,他のアバターを操れるっていうだけで面白かったけれど,すぐに飽きがきた.そのうち,ユーザーが「決闘」ゲームを考えだした.ルールは簡単.二人の決闘者,2本の魔法の杖,そして立会人.立会人の「始め!」という掛け声とともに,相手に魔法を3回ヒットさせたほうが勝ち.言うほどには簡単じゃない.なぜなら両方とも逃げ回ることができるんだから.
ツアー
また他の介護アバターがハビタットナンバーワントラベラーに選ばれた.彼はまた,彼は最も長く居住したアバターでもあった.新しいアバターがログインすると,彼は新アバターに付き添って,ガイドツアーをした.彼の役割は,新アバターに「友達」ができたと感じさせてくれることだった.
戦争
「戦いはドラマだ」この一文は最初のハビタット企画書に書かれてあった.ハビタット(その後「Microcosm(小宇宙)」と名付けられた)は武器を持って戦う機能を持つ予定であった.ほとんどのコンピュータゲームは戦いであったし,それは,アバター同士が相互作用しあうチャンスを与えると考えていた.
ここに,それがいかにして消え去る運命になったかを書いておこうと思う.ハビタットには射撃型と手に持つタイプの武器があった.アバターは255ポイントのヒットポイントを持ち(ヒットポイントはユーザーからは見えず,健康状態として大まかな値を知ることができるようになっていた).武器を持ち,相手を決めれば「実行」でその相手を攻撃することができた.そこには通信上の「遅れ」が存在し,あたりかはずれかに影響した.攻撃が成功するといくらかのヒットポイント(20とか)を奪うことができた.攻撃は常にアバターに伝えられた.あなたは尻もちをついた,のように.
わかるように,健康なアバターを殺すのはそうたやすいことではなかった.さらに,相手がさわれなければいいのだから,攻撃を避ける方法も2つあった.1)ゴーストになる.2)とにかく走り回る.銃撃戦をするときには2番目の方法を使えばいい.そうすれば反撃のチャンスもある.もしも本当に死にそうなときは,荒野はゴーストで通り抜ければよい.さらにはヒットポイントを回復させる方法もちゃんと存在した.ただ,最大の問題は,新しいユーザーが知らない内に強盗と出合い,「しりもちをつきました」と表示されても,「え?なんで僕はすわってるの?」とタイプしている間に,12発の弾を打ち込まれてしまうことであった.悪いことに,死んだ新アバターのポケットには手付かずのトークンと持ちものすべてが入っていることが多かった.われわれはアバターの手引き書に「銃は危険だよ」と書き加えるべきであった(自分たちで気付くと思ったんだけど).
他のタイプの戦いに関しては,魔法インフレ,偉大なる「先導者」,決闘,そして,イベント「Dungeon of Death, 死の迷宮」を参照のこと.
D'nalsi島の冒険
ハビタットで最初の,イベントはわたしが計画した「D'nalsi Island Adventure」という名前の宝探しだった.企画に数時間をかけ,準備にはじつに数週間を費やした(そのために100リージョンから成る島を作ったのである).そしてそのあとの数日は役者の訓練にあてた.わたしはプレーヤーがそれぞれの段階の問題を解くのにだいたいどのくらいの時間がかかるかを計算していた.目的:失われたSleshの宝玉を取り戻せ.第1段階:法廷.キャラクターの紹介と背景の説明,第2段階:Saleshが冒険者を募る,第3段階:隠されたテレポーターを探し当てる,第4段階:秘密のほらあなの入り口を見つけ,謎を解く.最終段階:狭い横穴を見つけ,埋もれた宝玉の入ったチェストを見つける.賞金は25000トークン.
最初の段階は町の裁判所での寸劇のようなものだった.おおくのひとが集まった.これ単なる導入部分であり,プレーヤーは参加すること以外にすることはなかった.
Saleshが冒険者を募る段階で彼は,島の地図をひとびとに配った.この地図には秘密のテレポーターへの道筋への暗号が記されていた.15分後大体10人目のプレーヤーに地図を渡し終えた頃,Salesh(私)は一人の先導者からESPを受け取った:テレポーターを見つけた!.え?まだほとんどのプレーヤーはスタートすらしていないのにである.そこでわたしは急いで他のプレーヤーに地図に隠された暗号が解かれ,それがテレポーターへの道筋を示していることをESPで伝えた.
結局このパズルは最初の15分で鍵を見つけたアバターによって8時間程で解かれてしまったのである.そのおかげで,半数のひとはテレポーターの場所すら見つけられずに終わってしまった.確かにわれわれはハビタットの住人にはさまざまなスキルを持ったひとがいることを考慮にいれ,もっと沢山の結末を用意し,さらにある程度のハンディキャップを導入して,出遅れたものがそれ以上に不利にならないように配慮すべきだった.
The Dungeon of Death (死の迷宮)
この戦闘タイプの迷宮ゲームは最近QuantumLinkの社員になった「介護者」の一人が考え出した.これは,最初プレーヤーとして,世界を熟知した者をシステム側にとりこむことでイベントを成功させることができた良い例である.(わたしがイベントのデザインには一切関わらず,プレーヤーとして参加した最初のイベントである)
何週間も前からハビタット新聞The Rantで宣伝された内容はこうである.恐怖の兄弟DeathとShadowが巣穴でおまえ達が来るのを待っている.ほどなく,街はずれに迷宮への入り口が発見された.入り口には「危険!当局は一切責任を持ちません.」の一文が.2人のシスオペがDeathとShadowに扮してログいんし,手には1発で致命傷を負わせることができる特別な銃を持って待ち構えた(普通の銃は致死まで12発かかる).迷宮は真っ暗で,行き止まりや,いくつもの罠が仕掛けられており,さらにいくつも似たような場所があってプレーヤーを混乱させるようになっていた.迷宮を解読するために何回かの死を経験することは誰の目にも明らかであった.しかし,ご褒美もすこぶる良かった.1000トークンとテレポーテーションの魔法の杖を売っているベンドロイドへのアクセスであった.ある晩,わたしはDeath役を引き受けるチャンスを持った.それはもう大虐殺!アバターを蝿のようになぎ倒した.もちろん彼等の多くはポケットを空にしてそれに備えてはいたけれどね.わたしがDeathの役を演じはじめたとき,彼は4人のアバターを行き止まりの通路に閉じ込めていた.そこで,デゴーストして構わず撃ちはじめた.ところが,2発目の弾丸をくらったところでDeathは死んでしまった.なんと!その前にDeath役をやっていたシスオペはどういうわけか魔法の杖を使って傷を直すことをしていなかったのである!先に述べたように,アバターが死んだ場合手に持っていたものはその場に残されるしくみになっている.当然,その場にいた普通のアバターのひとりがそれを拾って持ち去った.普通のアバターが持つべきではない一撃必殺の銃を.さてどうしたものか?実はあとでわかったことなのだが,同じことはそれ以前にも何度か起こっていた.このときDeathを演じていたのはQuantumLink (Q-Link)のシスオペで単純に,プレーヤーから銃を力づくで奪い返した.わたしはちょっと違う方法をとった.まず銃を手にしているアバターにDeathとして(決して正体を明かさずに),もし銃をもってこないのなら,こちらから殺しにいくぞ!と脅しをかけた.しかし彼女は街のなかにずっといればDeathだって彼女を殺しにはこれないでしょうと返事をしてきた.わかった,彼女は頭がいい.そこで,Deathは10000トークンで銃を買い取ると伝えた.結局,街の中心で取り引きは完了した.これはすばらしい経験だった.システム運営上のミスが外からの干渉なしに,ゲームそのものの中で解決されたのである.
R&R ウイークエンドアドベンチャー
1,2時間で終わるイベントに,「10個のボタンの内ひとつを押すと,10の隠されたチェストをあけるための10個の鍵のひとつにたどり着くためのヒントがもらえる」というのがあった.これが,結局数あるイベントの中でも最高のもののひとつだった(実際には3回行われた)と思う.なぜなら,必ず7人から10人が勝者になることができたから.たったひとつの問題は「時差」の問題だった.このイベントはスタート時間にできるだけ多くのプレーヤーが参加できるようにするのが鍵だった.Q-Linkは西海岸の現地時間の午後6時に始まった.つまり東海岸のひとは9時まで起きていなければならないということになってしまったわけである.
お金のなる木
「お金のなる木」イベントは,新アバターが始めて自分のアパートに入ったときに置いてある,「ようこそ」バージョンのRant新聞に書いてあるイベントである.森のどこかにお金のなる木があって,どのアバターもその木から100トークンをもらうことができることになっていた.だれもが魔法の木を見つけた!という気分を味わえるようになっていたのである.
富と名誉の墓石
これも最初から仕組まれていたイベントのひとつである.ある決まった数の碑には「富と名誉の墓石」と刻まれていた.もしこの碑を見つけたら,別の場所に隠す決まりであった.隠し場所が見つかるまでにかかった時間に応じて賞金をうけとることができた.問題点は,世界があまりにも大きかったので,碑が見つかるまで何週間もかかることがしばしばあったことである.これはあまり人気があったとはいえない.なぜなら,碑をみつけるために,何日分ものネットワーク使用料を払わなければならないのだから.
長期間イベントと短期間イベント
ハビタットのイベントにもいろいろな特徴が現われてきた.「長期間」タイプのD'nalsi島の冒険のようなイベントの勝者はいつも無料アカウントを持ったひとびとであった.無料アバターたちはなんらかの報酬,富,状態を得るまで,何時間でもログインしていればよかったのである.それに対して,有料アバターはせいぜい週1,2時間程度しかハビタットにいることができなかった.ひとびとが何週間もかけてイベントに参加することができるなどというのはまったくの誤りである.長期間タイプのイベントは「全員」が勝つことのできるイベントか,よっぽどのメリットがない限りやるべきではない.
グランドオープニング
驚いたのは,グランドオープニングイベントの人気であった.このリボンカッティングイベントは新しいリージョンのオープンイベントである.トークンや,賞品が新しいリージョンには隠されていることが多かったが,なによりもひとびと(特に受動者)が何か新しいものに飢えていることを感じさせた.Popustop Armsアパートのオープンは結局テスト期間中最もひとの集まったイベントであった.
伝染病
ハビタットで発明した最高のイベントに「伝染病」ゲームがある.今までに3種類の病原体が確認されている.1)Cooties,2)Happy Face,3)Mutant(またの名をFly(蝿)).われわれはその中のCootiesしかテストできなかったが,これは大ヒットだった.この伝染病は”Cootie”ヘッドをつけたアバターが発病する.このヘッドは現在のヘッドを”Cootie”ヘッドに変えてしまい他のアバターにさわってうつすまではずすことができない.一回感染すると,その日に限って,二度と感染することはない.これは,鬼ごっことエンガチョ(これでわかる?訳者)のハイブリッドゲームであった.一部のアバターは,とにかくこのヘッドが嫌いでしようがないアバターにうつしたいがために,自らすすんで感染した.毎回,伝染病が現われる1週間前から噂をながすため,最低1週間はうわさのたねになった.あるとき,結婚式を1時間後に控えた花嫁がこの病気にかかってしまった.彼女はいうまでもなくパニックに陥り,結局友人のひとりが病気の引き取りを申し出た.
いくつかのバリエーションが考えられる.自分が直るためには2人のアバターにうつさなければならなくする.こうすると,一日の終わりには非常に多くの感染者がでることになるだろう.「Happy Face」病.スマイルヘッド病ともいうこの病気は,副作用としてすべての会話が『HAVE A NICE DAY!』に変わってしまう.想像してみてほしい.何も知らないアバターに感染させて,Have a nice day! と言ってもらう楽しさを.ESPとメールはちゃんと働くので,コミュニケーションの手段が断たれてしまうわけではない.「Mutant」病は,その別名のとおり,巨大な蝿のヘッドになってしまい,副作用で会話は『ぶーーーーーん!』になってしまう.これらすべてが,楽しいイベントになる自信がある.
友達にやってみると面白いことがいくつかある.
わたしの発明:「あなたのポケットにメールが届いています」とタイプする.相手はしばしば,「あれー?ポケットにメールがあるはずなんだけど」と答える.
Chipの発明:このようなESPを送ってみてほしい.「ESP from: あなたの名前」そして,すぐに「こんにちわ!」.するとあなたの「こんにちわ」が3回送られる.
ハラスメント:これはどんなネットワークコミュニティーでも可能である.何人かで共謀して,あるアバターに短いメッセージをたてつづけに送り込む.彼の画面では読めないくらい早く画面がスクロールしてしまう.これは殺人110番の項でふれた犯罪人に対して行われた.
「インチキ」
世界でたったひとりの神であり,チーフプログラマーであったわたしは,いくつかの興味深い葛藤を経験した.とにかくそれぞれのユーザーに非常に気をつかった.特にプログラムのバグが気になった.「インチキ」が起きた時はかなり動揺した.「ユーザーがインチキをした!それなのにバグ報告をしてくれなかった!」わたしはまず,トークンの記録をチェックし,次にバグ報告を探した.そして,インチキをしたと思われる2人にメールで問い合わせをした.彼等は「正当な方法で稼いだんだ.だから,方法を教える必要はないだろ」と答えてきた.この時点で,わたしは,オラクル,あるいはプログラマーの立場で彼等と向き合ってしまい,アバターとしてのわたし(メールを出した本人)がおきざりにされてしまったことに気付くべきだった.神様はあたまに血がのぼっちゃいけない.ハビタットはそれだけで完結している「世界」なのだから.
ファンレター
シスオペをやっていて一番うれしいものにファンレターがある.介護者(誰がオラクルなのかを知ることになるものたち)がくれる,「おかげさまで」メールは本当にうれしいものである.シスオペの行為そのものが形になって現われるのである(Rant新聞の項参照).すべてはピラミッドの頂点から始まる.できの悪いシスオペは世界全部をだいなしにする.フィードバックを大切にせよ.
モンスター大会
リソースをアップデートする機能がハビタットにはある.だから,あるイベントのために特別のボディーをダウンロードできるようにする.実はシステムリソースの中に使ってないけれど面白そうな画像がある,オートバイと自動車である.もうひとつのアイデアは画面いっぱいの巨大足,動物,そして空中に浮かぶものである.
Macivelli
これはChipが考えたゲームである.プログラミングのサポートは一切必要ない,政治と秘密結社のゲームである.シスオペと介護者が2つの秘密結社を作り,どちらがハビタットを支配するかというゲームだ.やることはひとつ.どれだけ多くのメンバーを集めることができるか(ただし,結社のことは秘密にしておかなければならない).秘密の「合言葉」を使うことができる.秘密会合.秘密勧誘.もちろんいずれはギャングの抗争もおきるだろうね.結果がどうなるかは神のみぞ知る.
この文章をしめくくるにあたって,自分が多くのことを覚えていることに驚いた.そして,それが200人程のひとびととの関わりとの間で起ったことなのである.もしも何万ものひとが集まって世界を作ったらどんなにすばらしいだろう!この文章に書かれたのはテスト段階のハビタットのことではあるが,わたしは自分が作り出した世界を誇りに思う.みなさんに次の「ハビタット」でお会いできるのを楽しみに...
F. Randall Farmer (SPBLives)
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