「ブラック・ハウス」 "BLACK HOUSE"
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COVER
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「ブラック・ハウス(上)」
新潮文庫
著者:スティーヴン・キング
著者:ピーター・ストラウブ
翻訳:矢野 浩三郎
装画:サノ・カズヒコ
初版:2004/02/01
ISBN4-10-219333-2
| 「ブラック・ハウス(下)」
新潮文庫
著者:スティーヴン・キング
著者:ピーター・ストラウブ
翻訳:矢野 浩三郎
装画:サノ・カズヒコ
初版:2004/02/01
ISBN4-10-219334-0
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INTRODUCTION
LA市警の敏腕刑事ジャックは、辞職してウィスコンシン州の田舎町に移り住もうとしていた。折しも町では、食人鬼
フィッシャーマンによる少年少女誘拐事件が続発。事件の背後にある不可思議な現象を探るうちに、ジャックは、20年前に母親の命を
救うために旅立った異界からの呼び声を聞くことに・・・・。
稀代の語り部コンビが「タリスマン」に次いで贈る畢生のダーク・ファンタジー!
人目を避けるように、ひっそりと森の奥深くで息をひそめている”黒い家”。連れ去られた子供たちがこの魔性の家に囚われていると
確信し、捜索に向った人々は、幻影の恐怖と牙をむく魔犬の前に次々と返り討ちにあっていく。そして、悪夢の鍵を握る老人の言動・・・。
ジャックの異界への旅の終焉に待ちうけているものは?壮大なる冒険ファンタジーがついに迎える未曾有の大団円!
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REVIEW
本作「ブラック・ハウス」は、スティーヴン・キングとピーター・ストラウブの共著による、
ダーク・ファンタジー小説「タリスマン」の正当な続編である。
本作「ブラック・ハウス」においては、かつて「タリスマン」において、
少年から大人への第一歩を印したジャック・ソーヤーが、中年にさしかかった伝説的な元刑事として描かれている。
「ブラック・ハウス」という「タリスマン」の続編が書かれている、
という話を聞いた読者のほとんどは、かつての聡明な少年だったジャック・ソーヤーが、テリトリーやウルフの事をすっかり忘れてしまい、
典型的なダメな大人になってしまうが、テリトリーやテリトリーが持つ魔法の力に触れ、かつての自分、聡明で能動的だった自分を取り戻す。
という典型的なストーリーを思い描いたのではないだろうか。事実、わたしもそのような物語を想像した読者の一人なのであった。
勿論、ジャックがかつての自分を取り戻す、という部分についてはおそらくその通りなのだろうが、ダメな大人になってしまっている、
という部分について、「ブラック・ハウス」は、わたし達多くの読者の想像を良い意味で裏切っているのである。
何しろ30代のジャック・ソーヤーは、前述のように若くして数々の難事件を解決した伝説的で優秀な元刑事として描かれているのだ。
その辺りの前提となるコンセプトだけを取り上げて見ても、本書「ブラック・ハウス」が従来の一般的
な物語のパターンや先入観を大きく越えた小説だと言えるのではないだろうか。
しかし、そうは言うものの、本作「ブラック・ハウス」の物語の骨子は、前作である
「タリスマン」がそうであったようなダーク・ファンタジーとは大きくかけ離れ、その辺にいくらでも
転がっている、異常性格連続殺人犯を主人公等が追いつめる、つまり「ブラック・ハウス」は、
サイコキラーを犯人像とした所謂デティクティブ・ストーリーの形式をとっているのだ。
小説や映画といった創作物の間では、サイコキラーと言えば、最早手垢がついた感のある題材なのであるが、そのサイコキラーを
追いつめる姿を単に描くだけに留まらず、その背景にある巨大な存在を想定するところが、キングとストラウブの面目躍如というところであろう。
何しろ、世の中に溢れるサイコキラーものやデティクティブ・ストーリーの大前提は、事実を列挙することにより物語が構成されていく
訳なのである。一方、本作「ブラック・ハウス」では、表現はともかく散りばめられたそれらの事実の中に、
大きな、非常に大きな荒唐無稽な虚構が存在しているのである。
所謂デティクティブ・ストーリーの前提である「事実」と、「タリスマン」や
「ブラック・ハウス」が前提とする「荒唐無稽な虚構」は、本来相容れないものである。
しかし、「ブラック・ハウス」は、デティクティブ・ストーリーを描く上で、その「事実」と
「荒唐無稽な虚構」を見事に共存させ、現実世界で起きる連続殺人事件の原因と結果を見事に語りきっているのである。
しかしながら、この辺りの部分が、つまりリアリティを重んじるデティクティブ・ストーリーと、虚構を求めるファンタジーの融合が
本書の重要なコンセプトとなっているのだが、これが本作「ブラック・ハウス」を読者が受入れられるか
どうか、というボーダー・ラインとなっているのではないだろうか。端的に言うと、つまりこれが読者を選別する部分なのであろう。
例えば、トマス・ハリスの「羊たちの沈黙」において、クラリスが追いつめた異常性格連続殺人犯
バッファロー・ビルの正体が、仮に宇宙人や幽霊だったとしたら、果たして読者は納得するのだろうか。という観点が出てくるのである。
これについては、スタンリー・キューブリックの映画「シャイニング」と、キングが後年製作した
テレビ・ミニ・シリーズ「シャイニング」のスタンスの相違を念頭におくと興味深いのではないだろうか。
本作「ブラック・ハウス」は、本格デティクティブ・ストーリーを求める向きには、おすすめ出来ないが、
ホラーやダーク・ファンタジーを求める方々には、自信を持っておすすめできる作品に仕上がっている。
また、本作はキングとストラウブの共著なのであるが、文体にも違和感は無く、物語としての一体感があり、本当に共著なのかと思うほどの
出来に仕上がっている。
そして、本作はキングファンにとってはおなじみの「暗黒の塔」シリーズのサイド・ストーリーとして機能し、
「不眠症」や「アトランティスのこころ」で語られる「謎」のひとつの回答、
若しくは「暗黒の塔」シリーズへ、もう一歩近づいた印象を受ける。この辺りもキングファンに取っては、
嬉しいものである。
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