「幸運の25セント硬貨」
"Everything's Eventual"

 COVER

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「幸運の25セント硬貨
Everything's Eventua II

新潮文庫
翻訳:浅倉 久志 他
装丁:唐仁原 教久
初版:2004/06/01
ISBN4-10-219336-7
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 INTRODUCTION
 ベッドの枕に置かれた封筒。中には祝福の手紙(「きみはついてるな!」)と25セント硬貨。チップとも呼べない小額すぎるそのコインが、 ホテルのメイドにもたらした幸運とは・・・・
 市井の普通の人間に訪れた特別な瞬間を、名人芸の手業で描いた標題作ほか、天才キングが十年をかけて、瞬間瞬間の全精力を傾注した傑作揃い、 意外な結末ばかりの全七篇。全篇キング自身の解説つき。

ホラーだけだと思ったら大間違い!
天才キング10年の総決算。
これが最後の短篇集かも。

主な収録作品
「なにもかもが究極的」不思議な能力を持つ少年がさせられた仕事とは?/ 「道路ウイルスは北にむかう」絵が動く!追いかけてくる!どこまでも・・・・!/ 「ゴーサム・カフェで昼食を」サイコなウェイターがファンキーに大暴れ!/ 「幸運の25セント硬貨」手に入れた硬貨がもたらすのは幸運?それとも?

(本書裏表紙及び帯より引用)

 REVIEW
 本書「幸運の25セント硬貨」は、スティーヴン・キングの4冊目の短編集 "Everything's Eventual(2002)" の翻訳の第二冊目である。 収録作品は「なにもかもが究極的」「L・Tのペットに関する御高説」「道路ウイルスは北にむかう」「ゴーサム・カフェで昼食を」 「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」「一四〇八号室」「幸運の25セント硬貨」の7作品。

 「なにもかもが究極的」は、キングのライフ・ワーク「暗黒の塔」シリーズや「アトランティスのこころ」で 語られるブレイカーの不思議な日常を描いた作品だが、勿論「暗黒の塔」シリーズを知らずとも楽しめる作品に仕上がっている。
 本作の「そのうち何か思いつくだろう」的結末に、居心地が悪い感じをいだく方も居られると思うが、非常に美しい余韻を感じる事も出来る作品に仕上がっている。

 「L・Tのペットに関する御高説」は、ある夫婦が、お互いのペットの行動を基に崩壊していく様を夫の語り口で再現した物語で、ラストのなんとも言えない余韻が素晴らしい。
 その余韻は、映画「スタンド・バイ・ミー」の冒頭とラストのリチャード・ドレイファスの語り口を髣髴とさせるような印象を与える。
 また本作は、キングが講演を行う際、自身が朗読する作品としても有名。

 「道路ウイルスは北にむかう」は、「ダーク・ハーフ」にも似た恐ろしい物語である。この作品もラストの余韻が楽しめる作風である。

 「ゴーサム・カフェで昼食を」は、恐ろしい災難に見舞われた離婚間近の夫婦を描いているのだが、舞台がゴーサム・カフェと言う位だからおそらく、ダーク・ヒーローを意識した作品 だと考えられるし、実際のところダーク・ヒーローの活躍を描いているとも解釈できる作品だろう。
 また、極限状態において普通の人間がヒーローになってしまうのだが、ヒーローの行動が理解されない、と言う皮肉なヒーロー物語とも解釈できる。

 「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」は、悪夢または文字通り煉獄としか言えないような、恐ろしい題材を描いた作品である。
 おそらく読者の中にも、こんな恐ろしい夢を見た事がある人がいるのでは無いだろうか。

 「一四〇八号室」は、心霊現象を利用し金儲けを行ってきた男が、しっぺ返しを食らう、というありがちな物語なのだが、舞台を老舗のホテルとすることにより、 「シャイニング」をも髣髴とさせ、または映画「ポルターガイスト」「ビートル・ジュース」 のようなテイストの恐ろしいながらもユーモラスで色彩豊かな作品に仕上がっている。

 「幸運の25セント硬貨」は、貧しい市井の人々が思い描く美しくも悲しい夢物語である。この作品も結末は見事な余韻に包まれている。

 キングの作品には、当たり前の事だが長篇と短篇がある訳で、それぞれにそれぞれの味わいがあるのだが、キングを批判する読者に取ってはキングの長篇は長すぎて描写が詳細すぎるだとか、 短篇は短篇で結末が曖昧で尻切れとんぼのような印象を受ける、と言う感想を持つむきがある。
 おそらくキングを批判する前述のような読者にとって本短篇集「幸運の25セント硬貨」に収録されているような短篇は、結末が曖昧で明確でない中途半端な結末を持つ作品だと思うのだろう。
 勿論これら短篇の結末は、おそらく誰にとっても中途半端な印象を受取りやすい作品になっており、小説の結末以降、いくつもの物語が、もしかすると物語のクライマックスが語られるような印象を与えている訳だ。
 その余韻を楽しめるか楽しめないかは人それぞれの読書の楽しみ方なのであるから、何とも言えないのだが、もし許されるのならば、曖昧な物語の結末に出会った場合、目と本を閉じ、その物語を反芻して見ていただきたいと思うのだ。

 MANIAX
 本書「幸運の25セント硬貨」は同時発売の「第四解剖室」と共に、 スティーヴン・キングの4冊目の短編集"Everything's Eventual :14 Dark Tales(2002)" の翻訳だが、 原書に収録されている「ライディング・ザ・ブレット」は収録されていない。
 なお、「ライディング・ザ・ブレット」は、2000年にアーティスト・ハウス社より翻訳が出版されている。

 「なにもかもが究極的」に登場するディンキー・アーンショーは、「アトランティスのこころ」に 登場するテッド・ブローティガン同様、「暗黒の塔」を破壊するブレイカーである。
 「なにもかもが究極的」でブレイカーについて関心が出た方には、取り合えず、 「アトランティスのこころ」を読むことをオススメする。

The Art of STEPHEN KING

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