「ドラゴンの眼」
"THE EYES OF THE DRAGON"

 COVER

「ドラゴンの眼(上)」
アーティストハウス
翻訳:雨沢 泰
装画:たむら しげる
初版:2001/03/10
ISBN4-901142-46-1
「ドラゴンの眼(下)」
アーティストハウス
翻訳:雨沢 泰
装画:たむら しげる
初版:2001/03/10
ISBN4-901142-47-X

 INTRODUCTION
 ドラゴンの心を持つ勇敢な王子、ピーター。魔法の水晶を持つ邪悪な魔術師、フラッグ。正義と勇気をかけた闘いが、いまはじまる!
 闇の中に隠された真実。すべてはドラゴンが知っている。

 その日、デレイン王国に激しい雪嵐が吹き荒れた。正義と悪。手に汗にぎる運命の大脱出劇は、はたして成功するのか!?
 脱出不可能といわれる高さ90メートルの「針の塔」。運命の大逆転はあるのか?

 REVIEW
 デレイン王国の若き王子ピーターは魔術師フラッグの策略により、父ローランド王殺しの濡れ衣を着せられ、針の塔の頂上に監禁され てしまう。ピーターの弟であるトマス王子は、魔術師フラッグによるローランド王の殺害現場を、かつてローランド王が倒したドラゴン の剥製にされた眼を通して目撃したものの、魔術師フラッグの言いなりになってしまい、王位を継承することになる。果たしてピーター 王子は、針の塔から脱出し、魔術師フラッグの悪行を暴くことが出来るのか。そしてトマス王子の運命は・・・・。

 本書は、キングの娘ナオミ・キングと、ピーター・ストラウブの息子ベン・ストラウブに捧げられた、ジュブナイル・ファンタジー小 説である。とは言うものの、勿論大人にも楽しめる良質のファンタジー小説に仕上がっている。
 物語は、老王ローランドが治世する平和な国デレイン王国を舞台に、ローランドの二人の王子ピーターとトマス、そしてトマス王子を 王位に付け、王国の支配を目論む魔術師フラッグの悪行の物語である。
 物語は、ファンタジーの正に王道を行く、単純明快で、かつ神話的・普遍的な物語であり、登場人物も単純化されており、平凡な国王 と、賢く美しい王妃、悪い魔法使いに、賢い勇敢な王子と、その対照的な王子などが登場し、読者の期待通りに物語りはすすむのである。
 しかし、そこはキングである。物語の所謂枝葉の部分の描写が、微に入り細に入り、キャラクターを見事に構築し、何気なく語られた 単なるエピソードが、後に重要な伏線となり、読者にカタルシスを与え、感動すらさせられてしまうことになるのである。

 また本書は、キングが物語る一連の「暗黒の塔」シリーズを中心とする連作の一遍であり、さまざまな キャラクターが登場する。「ドラゴンの眼」では、言わずと知れた悪の代名詞フラッグのデレイン王国に おける、数百年にわたる悪行の幾つかを垣間見る事が出来るし、「暗黒の塔」で暗黒の塔を追い求めるロ ーランドは、「ドラゴンの眼」では、老いた王として登場、またフラッグ探求の旅に出たトマス王子とデ ニスは、後にローランドとジェイクによって、安否を確認されることになるのである。
 勿論、そんな事を知らない読者にとっても、この小説は大変素晴らしく、全世界のナオミやベン、そしてかつてナオミやベンだった大 人たちにとっても、大変素晴らしい読後感を約束するだろう。

 物語の形態は、暖炉のそばに腰掛けた話し好きの老人が、パイプを燻らせながら、炉端で寝転がる孫たちにせがまれて、物語を語る。 という所謂ストーリー・テリング的な形態をとり、まるで孫たちの反応に従い、または反するように、物語は紆余曲折し、回り道をし、 時系列までゆきつもどりつした上、まるでクリフハンガー的な章立てと、さまざまなプロットやトリックが、素晴らしい効果とともに、 物語を紡ぎあげているのである。

 本書は、現在フランスでアニメーション映画化が進んでいる。という話である。
 また、本書は元々は文藝春秋社で出版準備が進められていたのであるが、諸般の事情で版元をアーティストハウスに変え、無事出版に こぎつけたものである。

The Art of STEPHEN KING

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